你とは誰なのか

「聴く中国語」で特に力を入れているのは、インタビューとニュースの記事です。
インタビューは、本当に生の台詞なので、自分で言い直しをしたりする所を含めて面白いです。
今月号のインタビューは、秦昊でした。
その中で、你の使い方が気になりました。わたしがインタビューや口語を知らないだけのような気がするのですが、你がいったい誰のことなのか?と何度も頭を傾けました。
小説やエッセイでも、二人称で書き、その「あなた」の効果をあげている作品もありますが、このインタビューはそれとは違うように思いました。
また、よくドラマの語尾に「你」と付けるのとも違います。
こんな感じです。彼がチャン・イーモウの性格を説明する一節です。


我觉得,就是,他能够对演员一些心态,可能是一些心理的微妙之处很敏感,他会安慰啊,或者是去鼓励这样。


チャン・イーモウが、わたしを慰めたり励ますわけではないので、ここでの你とは、秦昊のこと?我のこと。もしくは役者全体のことを指すのか。と考えました。
そしてさらに、脚本の覚え方の説明では「他」の台詞はスタッフや観客が聞き取れればいいのだ。という使い方もしていました。これは、まあ自分が演じる役柄のことを「彼」と表現したのかと考えました。
しかし、「新しい役柄をどう理解して演じますか?」という質問の答えの「你」は難易度が高いです。


其实还是因为首先要既然接这个剧本,就是喜欢这个角色,其实你能喜欢这个角色就是肯定是因为说这个角色身上有很多东西你觉得好,是美的,那怎么样把这个东西传达给观众。


インタビューしている人は役者ではないし、読者に呼びかけているのでもないし、翻訳では、ここは秦昊自身が台本を受けて、役柄が好きになって。。という文章になっています。しかし、こう改めて書いてみると、文法的にどうなのかわかりませんが、本当にリアルタイムで話している人の言葉は、文章語でも、会話語ともまた違って面白いです。
そして、後半の「你」になると、もう少し微妙になってきます。


然后对我来说,成不成功就是只要观众喜欢演的角色,就成功了。
即使你没学过表演,在电影上面,观众喜欢就是成功的。


ここの後半部分になると翻訳は「あなた」となりますが、じゃあ、「あなた」とは誰なのか?ということになります。インタビュアーでもないし。一般的読者のことでもないでしょう。
と、改めて辞書をひくと、「一般的な広く任意の人、わたしのことを指す場合もある」とあります。
ただ、上のインタビューでの「你」は、前半は「我」という意味もあるかもしれませんが、それでも、わたしなら「あなた」的なニュアンスを感じさせたいです。
それは、本来の「わたし」でも「あなた」でもないかもしれない、もし、こういう状況になったらそこにいる「人」的なニュアンスでしょうか。



動画は、今年見た彼の印象的な芝居の映画「スプリング・フィーバー」≪春風沉醉的夜晚≫。