荷塘月色 朱自清

わたしの唯一の同学、もといさんと同じ文章の和訳をすることになって、3,4回目の「荷塘月色」全文和訳です。この作品は、去年暗唱をした「心に残る中国語」に一部が掲載されていたのですが、どうしてもこの文章だけが難しくて暗唱を諦めていました。
そして、このテキストに掲載されていなかった個所は確かに難しい、、というか特に後半の詩の個所は和訳できそうもありません。そもそもテキストに載っていた箇所も未だに難語と感じる単語が多いです。よく一年前にこれを暗唱しようとしたものです。。一年たって、自分が進歩しているのか、わからなくなってきましたが、一年前よりも丁寧に辞書を引いたので、ここにその単語解説までつけてみました。


荷塘月色  朱自清


  这几天心里颇不宁静。今晚在院子里坐着乘凉,忽然想起日日走过的荷塘,在这满月的光里,总该另有一 番样子吧。月亮渐渐地升高了,墙外马路上孩子们的欢笑,已经听不见了;妻在屋里拍着闰儿,迷迷糊糊地哼着眠歌。我悄悄地披了大衫,带上门出去。
  沿着荷塘,是一条曲折的小煤屑路。这是一条幽僻的路;白天也少人走,夜晚更加寂寞。荷塘四周,长着许多树,蓊蓊郁郁的。路的一旁,是些杨柳,和一些不知道名字的树。没有月光的晚上,这路上阴森森的,有些怕人。今晚却很好,虽然月光也还是淡淡的。


颇pō:〔副詞〕すこぶる.甚だ.
【参考】古い用例では「少し」「やや」の意味で用いられることもある.「すこぶる」も本来は「少し」の意味.
宁静níngjìng:(環境が)静かである;(心が)安らかである
带上门:通ったあとついでにドアをしめる.
幽:奥深い;ひっそりした;ほの暗い;かすかな.
僻pì :辺鄙である.
蓊wěng :草木が茂るさま.
郁yù :(草木が)茂る.
阴森森yīnsēnsēn:かげり暗いさま.薄暗くて不気味なさま.陽光なく薄暗くひんやりとするさま.


ここ何日も気持ちが少したいへん落ち着かない。今晩、庭で夕涼みをしていると、急に毎日通って来ている蓮池のことを思い出した。蓮は満月の光を浴び、きっと少し違った様子のはずだ。月はだんだんと高くなり、壁越しに外の道からした子供たちの笑い声は、既に聞こえなくなっていた。妻は部屋の中で息子の潤を軽くたたき、子守唄を口ずさみながら自分でもうとうととしていた。わたしはそっと上着を羽織り、ドアをしめて外に出た。
蓮池にそって、曲がりくねった石炭屑の道があった。ひっそりと鄙びた道であり、昼の人通りは少ないが、夜はさらに寂しい道である。蓮池の周りは、多くの樹が植えられ、鬱蒼と茂っている。道の傍らには柳や名も知らない樹が植えられている。月が出ていなかった夜は、薄暗くて不気味で恐かった。今晩は素晴らしいしかし、淡い月の光ではあるけれど。。、今の蓮池はとても素晴らしい。

  路上只我一个人,背着手踱着。这一片天地好像是我的;我也像超出了平常的自己,到了另一个世界里。我爱热闹,也爱宁静;爱群居,也爱独处。像今晚上,一个人在这苍茫的月下,什么都可以想,什么都可以不想,便觉是个自由的人。白天里一定要做的事,一定要说的话,现在都可不理。这是独处的妙处,我且受用这无边的荷香月色好了。


踱duó :そぞろ歩きをする.漫歩する.
天地 tiāndì: 天と地.(2)〈喩〉境地.世界.天地.
苍茫 cāngmáng: 蒼茫たる.見渡す限り青々としている.広々として果てしない.
妙处 miàochù:(1)よい場所.(2)すぐれたところ.妙味.
受用 shòu•yòng: 利益を受ける.役に立つ。楽である.心地よい
无边wúbiān: 際限がない.
且qiě :〔副詞〕しばらく.ひとまず.長時間(…する).長期の使用に耐える.〈書〉まさに…せんとす.


道ではわたし一人だけが、手を背にして漫歩する。この世界はわたしのもののようだ。わたしは普段の自分を越えて、別の世界へ行けるようなるような気がした。わたしは賑やかなのも、また静かなのも好きだ。大勢でいるのも、一人でいるのも好きだ。今晩のように、一人で蒼茫たる月の下で何を考えてもいいし、何も考えなくてもいい。このようにわたしは、自由人であるかのように思う。昼にやらなければならないこと、話さなければならないことも、今は全て気にかけない。これは一人である妙味であるが、わたしはこの無限に広がる蓮の香りと月の光を暫く楽しめば、それでいいのだ。


  曲曲折折的荷塘上面,弥望的是田田的叶子。叶子出水很高,像亭亭的舞女的裙。层层的叶子中间,零星地点缀着些白花,有袅娜地开着的,有羞涩地打着朵儿的;正如一粒粒的明珠,又如碧天里的星星,又如刚出浴的美人。微风过处,送来缕缕清香,仿佛远处高楼上渺茫的歌声似的。这时候叶子与花也有一丝的颤动,像闪电般,霎时传过荷塘的那边去了。叶子本是肩并肩密密地挨着,这便宛然有了一道凝碧的波痕。叶子底下是脉脉的流水,遮住了,不能见一些颜色;而叶子却更见风致了。


弥望míwàng:見渡す限り
田田:形容荷叶相连的样子。
亭亭tíngtíng: (樹木などが)まっすぐに伸びているさま.(女性が)しとやかでしなやかなさま.
层层céngcéng:幾重(いくえ)にも.とえはたえに.
零星líng:xīng:はしたの.こまごました.まばらの。
缀•綴zhuì:(糸と針で)つづり合わせる.つなぎ合わせる.飾る。
袅娜niǎonuó〔袅婷〕:なよなよとしなやかなさま.
羞涩xiūsè:たおやか。はにかんでもじもじしている.恥ずかしがって固くなる.きまりが悪い.
朵儿 duǒr:花.【補足】花の数や大きさについていう.つぼみ.
碧bì :碧玉(へき ぎょく).青色の美しい石.青緑色.
缕缕 lǚlǚ:ひと筋ひと筋と続いて絶えないさま.
清香qīngxiāng:かぐわしい香り.芳香.
渺茫miǎománg:水面(海面)が果てしなく広々としている.渺茫としている(夢や望みが)果てしない.かすかである.ぼんやりとしてはっきりしない.
颤动 chàndòng: 小刻みに揺れ動く.震える.
闪电 shǎndiàn: 稲妻(が走る).
霎时(间)shàshí(jiān):=〔煞时〕ちょっとの間(に)。一瞬の間に
肩并肩jiānbìngjiān:肩を並べる.肩を並べて一緒になってする
挨āi :触れる;寄りかかる;隣りあう;並ぶ.そばに寄る;すれすれに近づく
宛然wǎnrán:仿佛。
凝níng:凝る.凝結する.
脉脉mòmò:这里形容水没有声音,好像饱含深情的样子。
风致fēngzhì: (1)美しい顔立ちと立ち居振る舞い.(2)趣.味わい.ユーモア.


曲がりくねった蓮池の水面には、見渡す限り蓮の葉が連なっている。葉は水面より高く、しなやかな踊り子のスカートのようだ。幾重にも重なった葉の間でまばらに散らばって咲いている白い花は、たおやかに咲いている花もあれば、恥じらいで蕾のままのもある。まさしく一粒の真珠のようでも、青天の星のようでも、湯からあがったばかりの美人のようでもある。微かな風が通る所に、一筋の芳香が残り、遠く高き楼からかすかに聞こえてくる歌声のようだ。そのとき、蓮の葉と花はわずかに揺れ、稲妻が走ったように、一瞬にして蓮池の向こう側まで揺れが伝わった。肩を並べるようにして繋がっていた蓮の葉に、濃い青緑色の波痕が一本できたようだった。葉の下には音もせずに水が流れ、葉に遮られて水の色を見ることが出来ないが、葉の方は却って趣がある。


  月光如流水一般,静静地泻在这一片叶子和花上。薄薄的青雾浮起在荷塘里。叶子和花仿佛在牛乳中洗过一样;又像笼着轻纱的梦。虽然是满月,天上却有一层淡淡的云,所以不能朗照;但我以为这恰是到了好处——酣眠固不可少,小睡也别有风味的。月光是隔了树照过来的,高处丛生的灌木,落下参差的斑驳的鄢影,峭楞楞如鬼一般;弯弯的杨柳的稀疏的倩影,却又像是画在荷叶上。塘中的月色并不均穀;但光与影有着和谐的旋律,如梵阿玲上奏着的名曲。


泻(瀉)xiè :速く流れる.
笼(籠)lóng かご.
笼(籠)lǒng :覆う.包む.立ちこめる.
轻纱 qīngshā: 細い綿糸.細い紗(しゃ).
酣眠 hānmián: 熟睡(する).
固gù :もとより.もともと.
小睡 xiǎoshuì:短い睡眠をとる.短時間仮眠する.
丛生cóngshēng:(草木が)群がりはえる.群がり生ずる.同時に発生する.
参差cēncī: (長短・高低・大小が)まちまちである,不ぞろいである.
斑驳bānbó:色彩の入り交じった.まだら模様の
峭qiào:山の険しくそびえるさま.険しい.巌格である.厳しい.
棱 =〔楞〕物体のかど.物体の上に盛り上がった筋.
稀疏xīshū:(物や音が)まばらで薄いさま.
倩影qiànyǐng:麗しき面影.
均穀jūn:yún:平均.均等.
梵婀(ē)玲:英语“violin”的音译,即小提琴。


月の光は流水のようであり、静かに一本の葉と花に光が流れ注ぐ。薄く青い霧が蓮池に立ち込めている。葉と花は牛乳の中に入れて洗ったようであり、細い綿糸で覆われた夢のようだ。満月ではあるのだが、空には薄い雲がかかり、月が明るく照らすことはできない。しかし、わたしはこれがちょうどいいと思う。熟睡するのはもともと欠かせないが、まどろぐのもまた、趣がある。月の光は樹木を隔てて照らしているので、高い所で群がってはえている灌木が葉に不揃いでまだら模様を落とし、くっきりと盛り上がって見える幽霊のようだ。曲がった柳のまばらな美しい姿は、蓮の上に書かれた絵のようだ。池の中の光は均等というわけではない。しかし、光と影がもたらす調和がとれたメロディは、バイオリンが奏でる名曲のようだ。


  荷塘的四面,远远近近,高高低低都是树,而杨柳最多。这些树将一片荷塘重重围住;只在小路一旁,漏着几段空隙,像是特为月光留下的。树色一例是阴阴的,乍看像一团烟雾;但杨柳的丰姿,便在烟雾里也辨得出。树梢上隐隐约约的是一带远山,只有些大意罢了。树缝里也漏着一两点路灯光,没精打采的,是渴睡人的眼。这时候最热闹的,要数树上的蝉声与水里的蛙声;但热闹是它们的,我什么也没有。


漏lòu :(入れ物に穴があいて液体や光などが)漏る,漏れる,しみ出る.(秘密などを)漏らす.漏洩(ろう えい)する.抜け落ちる;抜かす.
段duàn :〔量詞〕[a]長い物の区切りを数える.[b]一定の距離や時間を表す.[c]事物の段落・段階を数える.
特为tèwèi:特に.わざわざ.
一例:一概,一律。
乍zhà:……したばかり.……しはじめ.
烟雾yānwù:煙や霧.
丰姿:风度,仪态,一般指美好的姿态。也写作“风姿”
辨得出biàn•dechū:見分けがつく.
隐约yǐnyuē:はっきりしない.ぼんやりとしている.
大意dàyì:大意:だいたいの意味.
瞌睡kēshuì:=〔渴 kě 睡〕居眠り.眠い.


蓮池の周りは、遠くも近くも高いも低いも、全て樹であり、特に柳が最も多い。この樹たちは蓮池を何重にも取り囲んでいる。ただ小路の傍らに、隙間から光が漏れ、まるで月の光のためにわざわざ残しておいたかのようだ。樹の色は一律に陰鬱で、見たばかりだと煙や霧のようである。しかし、柳の姿は煙と霧の中でも見分けがつく。梢の上にかすかに見えるのは遠くの山々であるが、それもぼんやり見えるだけだ。樹の隙間から数点の光が漏れるが、元気が無さそうで、居眠りをしている人の目のようだ。今、最も賑やかなのは樹の上の蝉と水の中の蛙をあげることができる。しかし、賑やかなのは彼らであって、わたしには何もない。


  忽然想起采莲的事情来了。采莲是江南的旧俗,似乎很早就有,而六朝时为盛;从诗歌里可以约略知道。采莲的是少年的女子,她们是荡着小船,唱着艳歌去的。采莲人不用说很多,还有看采莲的人。那是一个热闹的季节,也是一个风流的季节。梁元帝《采莲赋》里说得好:


约略yuēlüè:大略.あらまし.
荡dàng: 揺れる.揺れ動く.さまよう.
艳歌 yàngē:专门描写男女爱情的歌曲。
风流:这里的意思是年轻男女不拘礼法地表露自己的爱情。


突然、蓮を摘み取る場面を思い出した。蓮を摘むのは、江南の古い習慣で、随分前からあったようだが、六朝時代が盛んであったらしい。それは詩歌からおよそ知ることができる。蓮の葉を摘むのは若い女の子たちだ。彼女たちは揺れる小舟に乗り、恋歌を唄いながら進む。蓮を摘む人が多いのは言うまでもなく、蓮を摘むのを見る人もいる。それは賑やかな季節でもあり、また恋の多い季節でもある。梁元帝の「採蓮の賦」には、このように見事に描かれている。


  于是妖童媛女,荡舟心许;鷁首徐回,兼传羽杯;櫂将移而藻挂,船欲动而萍开。尔其纤腰束素,迁延顾步;夏始春余,叶嫩花初,恐沾裳而浅笑,畏倾船而敛裾。

  可见当时嬉游的光景了。这真是有趣的事,可惜我们现在早已无福消受了。
  于是又记起,《西洲曲》里的句子:
  采莲南塘秋,莲花过人头;低头弄莲子,莲子清如水。


・妖童媛yuàn女,荡舟心许:艳丽的少男和美貌的少女,摇着小船互相默默地传情。妖,艳丽。媛女,美女。 许,默认。
・鹢 yì首:古时画鹢于船头,所以把船头叫鹢首。鹢,水鸟。
・櫂 zhào:通“棹”,划船的一种工具,形状和桨类似。
・敛裾liǎnrèn:这里是提着衣襟的意思。裾,衣襟。
・没福消受|幸福の少ないこと.
・《西洲曲》:南朝乐府诗,描写一个青年女子思念意中人的痛苦。


「きれいな少年と美しい少女 彼らは心と心を通じ合わせ揺れる船に乗って蓮を摘みに行く。船が回ると何度も杯を交わして笑いを愛情として伝える。 櫂に浮草がからまっても分けて進む。女の子たちの体は美しく白じゅすのひとえを腰に巻き。愛情が長く続き別れがたくなり 名残惜しく振り返る。春の末と夏のはじめが素晴らしい季節で、葉は柔らかく花はようやく開く。水が跳ねては楽しく笑う 水に服が濡れないようにと身をかわす」
当時の遊び戯れている風景を見ることが出来る。これは本当に趣のあることだが、残念なことに、わたしたちはもうこれを楽しめない。するとまた、「西洲曲」の中の句を思い出した。
「 南塘の秋に蓮を摘む 蓮の花は人の高さになり 蓮の実は低くうなだれる 蓮の実の下に流れる水は美しい   」


  今晚若有采莲人,这儿的莲花也算得“过人头”了;只不见一些流水的影子,是不行的。这令我到底惦着江南了。——这样想着,猛一抬头,不觉已是自己的门前;轻轻地推门进去,什么声息也没有了,妻已睡熟好久了。


过人guòrén: 人よりまさっている.


今晩もし蓮を摘む人がいたら、蓮の花も人の高さより高くなっていることに気づいたろう。ただ、流水の様子が見えないのは、残念だ。わたしは結局江南を懐かしく思ってしまう。
こんな風に考えていて、ふと頭をあげると、いつのまにか自分の家の玄関にいた。そっとドアを押して中に入った。何の音もしなかった。妻はすでにぐっすり寝込んでいた。